将門


あらすじ

源頼信の命を受け、大宅太郎光國は将門一派の残党狩りのため蝦蟇の妖術を使う怪しいものが出ると相馬の古御所に探索にやってくる。 光國は旅姿のまましばし微睡んでしまうが、ふと不気味な空気を感じて眼を覚ます。 そこに現れたのは解語の花と思える程の絶世の美女であった。 不審に思い斬りかかろうとする光國を押し止め、 「私は京の島原で如月という傾城でございます」 と名乗った。 遠く離れた相馬の古御所に傾城遊女が、初めて出会った自分の名を知ることを訝しむ光國に対して、 如月は色仕掛けで口説こうとする。

大宅太郎光國は天慶2年の平将門の乱の後、源頼信*1より将門の残党探索を命じられ相馬の古御所*2を訪れる。 微睡んでいた光國が目を覚ますとそこには美しい解語の花の立ち姿があった。解語の花は玄宗皇帝が楊貴妃を褒め称えた言葉で美しい女性を表す。 女性は京の都の島原の傾城*3如月であると名乗る。 古御所に現れた美女の姿を不審に思う光國が問い詰めると如月は口説きにかかる →ここで大山の絵は満開の桜へと切り替わる

嵯峨や御室の花盛り 浮気な蝶も色かせぐ
廓の者に連れられて 外珍しき嵐山

嵯峨や室などが桜の花盛りを迎える頃、客に連れられて嵐山((傾城は廓より外には普段は出ることができない))にて見初めたという。 それ以来恋しいという気持ちが募っていたという如月の様子を見る光國は、平将門の娘滝夜叉姫であろうと察するが、 一計を案じ将門の乱の模様を細かに語り出す。

さても相馬の将門は威勢の余り謀反ととも企てならべし大内裏
・・・
かくと見るより常平太が放つ矢先に将門はこめかみのぶかに射透されあへなき落命
寄せ手は勇む勝ち鬨と今見る如く物語る

亡父の落命の様子を聞き涙を催すの姿を見咎めた光國は如月に詰め寄るが、傾城が客との後朝を惜しむ涙だと言い逃れようとする。

ほのぼのと雀囀る奥座敷
灯火しめす男ども  屏風一重のそなたにはまだ睦言の聞こゆれど
我は見たらぬ夢を咲き早後朝と引き締める
帯隠さるる戯れも憎うはあらぬ移り香に又盃の数ふれて
・・・

しかし取り繕う如月は将門の形見である相馬錦の御旗*4を落としてしまう。 肉芝仙伝来の妖術を使うという滝夜叉姫であるとなおも詰問する光國に、如月正体を明かし光國の体を妖術をもって宙に引き上げようとするも、光國は刀をもって戦ったのであった。 肉芝仙伝来の妖術を使うという光國の体を妖術をもって宙に引き上げようとする。光國は家来と共に刀を振るうも滝夜叉姫の妖術に苦戦する。 なんとか振り払い大立ち回りを演ずるも滝夜叉姫は何処ともなく消えてゆくのであった。

「怪し恐ろし世にうたふ」は浄瑠璃を謡うことを外題の「世善知鳥相馬旧殿(よにうたふさうまのふるごしよ)」に、「時をゑほんの忠義伝」は時を得ることを絵本にそれぞれかけている。

みどころ

嵯峨や御室の花盛り…… 瀧夜叉姫のクドキ ▼この件で山が切り返される(花見の回想) ▼ふつう瀧夜叉姫は花道のすっぽんから登場する。六世尾上梅幸曰く「蛙に乗った思入でセリになる」のだが、山あげ行事では舞台の奥行き(空間性)を生かし、本当に蝦蟇に乗っての登場となる。

成立

山東京伝の読本『善知鳥安方忠義伝』を脚色した「世善知相馬旧殿」で、「忍夜恋曲者」または「将門」「忍夜孝事寄」ともいわれる。脚色を変えたものに「大滝夜叉」があり、昭和30年(手踊り・久慈浜山水荘)に上演されている。*5

作者

宝田寿助作詞 五世岸澤式佐作曲 二世藤間勘十郎・四世西川扇蔵振付

初演

一八三六(天保七)年 市村座(盆興行)

上演時間

約40分


*1 藤原道長四天王の一人とされる
*2 古御所は「雨も頻りと」にかけられている。
*3 遊女のこと。『漢書』外戚伝にある。美しさに夢中になり城を傾けることによる
*4 錦の御旗は天皇の旗を表す。「新皇」を称し謀反を起こしたとされることによる
*5 常磐津津太夫師匠のお話によれば名古屋で脚色されたものだそうである。


 

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